開催記録と謝辞
2018年8月5日「ROCK FILL JAM in ala 2018」を開催しました。今年も音楽ライブを中心に、フェス飯サミット、クリエイターズマルシェ、ヤイリギターとゼマイティスのギター試奏体験、楽器やクラフトのワークショップ、映画上映など、昨年以上にボリュームアップした内容に、2000名を超える来場者で賑わいました。さらに、今年も同時開催となった「Welcome to A.G Town」では、小山田壮平、田渕ひさ子、ハルラモネルの3名が出演し1日を締めくくりました。
LIVE
Welcome to A.G Town
「Welcome to A.G Town」は、ヤイリギターが工房を構える「アコースティック・ギターのまち可児」として開催している可児市文化創造センターの事業です。ROCK FILL JAMではその出演者のブッキングを共同で行っています。今回は、はじめての試みとなる出演者3名の対バン形式でのライブ。
オープニングアクトは東海エリアで活動しているシンガーソングライターのハルラモネル。メインアクトにはbloodthirsty butchersやtoddleなどで活動している田渕ひさ子。そして元andymori、現在はALとしてバンドでの活動も行っている小山田壮平をお迎えしました。また、小山田さんが今回の田淵さんとの共演のために書き下ろした新曲「彼女のジャズマスター」を披露するなど、嬉しいサプライズも!
全国各地の皆様に注目していただきチケットは数日で完売、近隣そして遠方からもご来場いただきありがとうございました。
ART & GUITAR
ROCK FILL JAM in ala 2018に先駆けて開催した音にまつわるアート展「みえる音。展」にもたくさんの方が足を運んでくださいました。県内外からの12アーティストによる作品が並び、イベント当日にはヤイリギターとゼマイティスのギターの試奏ブースも登場。また、ライブエリア内でのライブペイントも開催し、たくさんの方が足を止めて見入っていました。
WORKSHOP & MOVIE
夏休み中の子どもたちが楽器に触れるきっかけとなるようにと、ヤイリギターさん&神田商会さんが共同企画として「ギターの素材でナニツクル?」という木工のワークショップを開催。また、タブラボンゴ東海の皆さんは「タブラボンゴをたたくワークショップ」を開催しました。
さらに、各務原全国まちおこし映画祭実行委員会による「MACHI × FILM GO! GO!」では、なんと映画監督で俳優でもある利重剛さんが登場、横浜を舞台にした短編映画「Lifeworks」の上映会とトークショーが行われました。こちらでMACHI×FILM GO!GO!レポートがお読みいただけます→Cafe Mirage「地域×映画 - 自分の街での映画作りの可能性」
セルフレビュー:
何がやりたかったのか、何を続けるのか。
2018年8月5日、ちょうど1ヶ月前。ROCK FILL JAM in ala 2018が開催され、とっても嬉しいことに無事に終了した。
朝10時30分からお昼の15時30分までの5時間はあっという間すぎて、蜃気楼みたいに掴みどころがなく、リアリティに欠け、夢をみていたのとあまり違いを感じない。例えば、明日の朝起きたときに「開催まであと3日だ!頑張ろう!」と電話で言われても、納得してしまうきがする。よし、がんばろう。
まず、この"掴みどころのなさ"の話をする。きっと、多くのイベント運営がそうであるようにROCK FILL JAMもまた「なにを成功と言っていいのかわからない」という点がそうだった。これはきっと、オバケみたいなもので、それははたして、来場者数なのか、会場の熱気なのか、お金のことなのか、仕掛けた企画への反響なのか。
きっとそれらすべてだろうし、目や耳に届かない部分も含んだ「全部」だろうからこのオバケは掴みどころがない、というよりも「掴みきれない」という表現のほうが正確かもしれない。このオバケはアンケートをとっても、グラフ化しても、数値化して一覧にしても、あまりピンとこない。
そんなことより今年は「ライブがむちゃくちゃ良かった!」とか「今年はご飯だけじゃなくてお酒が売れたよ」とか「ライブペイントやVJがすごかった」とか。「ワークショップ、子どもがすごく喜んでたよ」とか「やったねごとうくん、すげえよ」とか「利重剛監督に会えた!」とか「やばいよ小山田壮平が"グロリアス軽トラ"で可児市の空の下~って歌ってたよ」とか。そういった言葉をかけてくれる人がたくさんいた。イベントが終了してからもLINEやメールで送られてきた。
それはもう、すごくたくさんの人から。去年までの比じゃないくらい。言葉の内容だけじゃなくて、その人達はなんか楽しそうで、興奮していて、嬉しそうだった。
僕はそれを聴いてとてもシンプルにイベントの「成功した部分」を知ることができた。震えるくらい嬉しかったし、何度も泣いた。
さて、僕は今年、このRFJに小さな願いを持ち込んだ。個人的な色眼鏡というか、きついカラーフィルターをかけてイベントづくりをしていた。
それは制作委員会のメンバーに、それとなく伝えたし。地元のフリーペーパー「歩好里人」にも、「みえる音。展」の挨拶にも書いたけど、それは例えば「面白いものは連鎖する」とか「ヤバイものはヤバイやつの目を覚ます」とか「誰かの叫びはきっと誰かの心に風を吹かせる」とかそういった類のことを願っていた。
「やりたくて。でもまだ、やっていない。人たちへ。やろうぜ。」という、ある種のメッセージを伝えたかったし。やれる場所、あるよ。という事が、イベントを通して言いたかった。
ここは田舎で、限界集落とは言わないが、ベッドタウンで高齢化がすごい。クルマで走っていたり地元のスーパーにいくと、高齢者の多さにびっくりする。大学がないから若者は基本的に外に行く。当たり前のようにそのほとんどが地元に帰ってこない。
夢を持った純真な学生は都市に憧れる。かつての僕のように純真でなくても、もっといえば学生でなくても都会に夢を見る。きっとそれは「何かをやりたい」というエネルギーが必然的に「何かをやっている」人たちの元へ集まるからだ。そして、そのエネルギーは、ポジティブな事件を生みだしていく。
もちろん地元に残った人間にも、「何かをやってやる」という小さな野望や計画がある。僕はそういった人とたくさん出会ってきた。
けど、いつの間にか「何かをやるんだ」というエネルギーを持て余して、パチンコや、飲み会や、釣りをしたり、家でテレビやYouTubeを見ることが、何かをやっているということになる。そういった人ともたくさん出会ってきた。こういう類の話は、とっても普通なことで、それでいいし。きっと田舎とか都会とか関係ないんだろう。
でもやっぱり、兎にも角にも、田舎にはポジティブな事件がない。「ない」というと大袈裟だけど、目を凝らさないときっと見つけにくい。目にうつるのは、自治会の人たちが高齢化に抗って「お祭りやイベントの縮小や消滅」という危機と毎年せめぎ合って戦っている様子や、閉店していく小さな商店。それこそライブハウスやCDショップとかも都市部でさえ経営が難しいらしいから、田舎なら尚更だ。
きっと、僕ら田舎者は長いあいだ喪失の中にいて、これからも失い続けていく。
だから、僕はイベントを通じて、その喪失へ抗いたかったし、やりたいと言う人への「場」を生み出したいと思った。「やっているぞ」と目を伏せてる人たちの間近で叫びたかった。
ROCK FILL JAMはこの愛する田舎に住むことを決めた僕自身への為、そして知らない誰かへのメッセージでもあった。
それは君に届いただろうか。
きっと来年も「ROCK FILL JAM in ala 2019」を開催するから、本当はこういう「かっこ悪いネタばらし」をするつもりはなかった。でもいつか僕らにも終わりがくるだろうから、今言っておくべきだと感じた。なにより、今僕たちは力を貸してほしいと思っている。もっと、楽しいことをしてやろう。と企んでいる。
でも、僕らが作っているものは、大切な制作委員会のメンバーの、大切な生活の上に成り立つべきだから、今のままだと限界がある。だから、どうか助けてほしい。
すべてのアイデアやエネルギーを費やしたあと。すべてが終わったあとで、ここで生まれるのは、小さな変化でいい(大きい変化でもいいけど)。それこそ、何が成功なのか、掴めないオバケのようなものだと思う。
例えばそれは、中学生の頃の僕が同じ塾の友達にあこがれて、お年玉でギターを買って、Cのコードを練習したときのような。『G戦上ヘヴンズドア』を読んだあとや『カメラを止めるな』を観たあとの、大きい愛に触れて、何かがしたくてたまらなくなるような。
そんな些細な「ポジティブな事件」が、このまちやこの場所に、そして訪れた人に生まれたらいい。そういうことがやりたい。もし、いつかそれが巡り巡って「やってるよ」って伝わってくるようなことがあれば、それこそ震えるほど嬉しいから。
最後に、ライブへの出演や出店者としてこのイベントに関わってくれた人、このイベントにお金を出してくれてる協賛企業の皆さん、「協力するよ」って制作の資材をくれた方々。なんか楽しそうだなって思って予定を開けてくれた人、ふらっと立ち寄ってくれた人。何より、制作委員会の仲間たち。関係してくれたすべての皆様へ、本当にありがとう。
そもそもこれは蜃気楼でも夢でもないから、パッとある日突然消えてしまうことはないけど、まだこの夢の途中で、夢見心地でいられることを嬉しく思っています。
それでは、また来年。
ROCK FILL JAM 制作委員会
副委員長 ごとうひろみ